・お産の研究をされている亜紀さんのお産体験談
・気持ちのいいお産は〇〇することが大事!!
・産むためにしたことは環境を整えること=生き方を整えること。
33歳第1子(長女/子ども2人)助産院出産
35歳第2子(次女/子ども2人) 助産院出産
東京都 松本亜紀さん(民俗学研究者)
赤ちゃんが出来た!その時の気持ちは?
妊娠した時の気持ちは喜び!
妊娠する前、
継続ケアの在り方について調査するため、
都内にあるいくつかの助産所に何度も足を
運びました。
そこで出会った産婦さんたちは、
「もう一人、すぐにでも産みたい」
とおっしゃる方が多く、
何回も何回も聞いてきたので
そういうお産が現実にあるなら、
体験したいな、と思っていました。
必然的に助産院で産まなきゃ、
という感じに(笑)
わたし自身、9人兄弟の2番目、次女。
18歳になるちょっと前、
末っ子が生まれ、
オムツを替えながら
受験勉強をしていました。
そんなこともあって、
お産や子育てのハードルが
すごく低かったですね。
母親になるのが目標、
と言うところもあって
妊娠に対しては前向きでした。
前の職場では、
沖縄の民俗や風習を調査研究していたのですが、
ユタ(霊的能力を持つ女性)たちに
妊娠を報告すると、
「祈りが届いたからだね」と教えてくれました。
お産のイメージ
助産院で産むという選択にたいしての
周りの反応は、大賛成!!
産むのはわたしだから、
わたしが満足するようにしたらいいよ、と。
特に妊娠に対して怖い、
という思いはありませんでした。
お産を迎えるにあたり、大切にしたこと
1番大事にしたのが、
産むために集中する環境を整えることでした。
東京中野区の、
松が丘助産院で産んだのですが、
最初の健診の時、
「1番不安なことは?」と助産師さんから
聞かれたんですよね。
40分くらいかけて色々とお話を
聞いて下さるなかで、
実母との関係があまり良くないことを
指摘されたんです。
普段、母に対するネガティブな感情を
人に見せないようにしていたので、
指摘されて驚きましたが、
助産師さんが
「お産に集中するためにも、
問題を一旦棚上げしておきましょう」、
とおっしゃったんです。
連絡を断つことも一つの手ですよ、
ということでした。
母はいわゆる、毒親。
連絡を断つとなると、
周りの理解も必要になりますが、
夫はわたしの1番のウィークポイントに、
気が付いてくれていたんですよね。
この時も、精神的なサポートをしてくれました。
夫はわたしがわたしであることを
サポートしてくれている存在なんです。
普段は月20日くらい出張していて、
ほぼ家にいないのですが、
彼に対して何の不安も不満もないです。
それは、1番大事なところをわかって
サポートしてくれているからなんでしょうね。
家にいるだけが夫・父の役割ではないんだよね、
と感じています。
ともかくわたしが赤ちゃんと、
お産のことに
気持ちを集中できるようにしていました。
とはいえ、
母の事はいつも頭の片隅にありましたが!
妊娠時は、身体の快・不快を意識する時間でした。
青ヶ島のお産について、
実は、3.4年話を聞いても理解できないことがありました。
(↓亜紀さんは、東京都青ヶ島でのお産の在り方を調査研究されています)
自分が長女を産んでもなお、
理解できなかったことが、
2011年3月の
東日本大震災直後に次女を産んだことで、
理解することができました。
例えば、
集中すること。
今、何をすべきか、
優先順位をつけること。
(とはいえ、お産に集中するために、
母との連絡を絶っていることに
罪悪感もありましたが。)
それまでは善悪でこうすべきと思ったり、
他者から見た目線が気になるタイプでしたが、
妊娠した時の身体の反応はわかりやすく、
この時期に
身体の快・不快で判断するということに
慣れていきました。
思考優位だったのが、
自分軸で考えられるようになっていったんですね。
まず目の前のことを
やり遂げることに集中していることが大事だな、
と気が付きました。
例えば行きたくないな、
と思った場所にはいかない。
結果的に、
その選択が大きな事故に巻き込まれることを
未然に防いだ、という経験を通して、
よし、これだ!となりました。
ある意味実験のような時間ですね(笑)
助産院は生活改善道場
わたしがわたしとして
生きていくための場であったと思います。
助産院では、
ビシバシ言われて
厳しく注意されたこともあります(笑)
首元とかお腹周りとか、
暖かい格好をしていないと、
注意されるんですよね。
こうしなさいといわれることも多く、
例えば、目を使わないように
本は見ない、テレビを見ない、など。
そういうことを実際守っていると、
身体を触って気が付いてくれるんです。
そして、「よくやったね」、って褒めてくれる。
すると、またやりたくなるんですよね(笑)
今でも覚えているのが、
病院への定期健診(助産院で出産する方は
定期的に提携先の病院へ健診に行きます)
で、赤ちゃんの体重が増えていなくて
落ち込んだ時、
フラッと助産院に立ち寄ったんですよね。
そしたら、その時いた助産師さんが、
「これ食べたら、赤ちゃん大きくなるかもよ」、
ってお茶と一緒にお饅頭を出してくれてくれたんです。
わたしをほぐそうとしてくれている態度に、
とても励まされたし、
安心しました。
産後の入院している時も、
日中3、4回必ずみてくれて、
夜中の授乳中も気にしてくれたり、
差し入れてくれるおにぎりに
ファイト―!!って手紙が添えてあったり。
気持ちを共有してくれる。
目線を合わせようとしてくれる。
それがとても嬉しかったです。
助産所は出産の場、
であるけれども、
生活そのものを支える、
生活改善道場のような場所でした。
何かあった時に、
あそこに行けば、
今また頑張れるという場所です。
腹帯祝い。助産師さんに帯をまいてもらう様子。
お産のリアル第1子 気持ちいいお産、必要なことは〇〇すること
陣痛の合間の間欠期が
すごくすごく気持ちよかった!!
夫の立会いについては、無し。
間に合ったら嬉しいかな、
と考えていたのですが、
同じタイミングで
助産院に来た方が、
「お産が近づいたのに、あの人、
夫がいなくてかわいそう 」
と、その方の夫と話している声が聞こえてしまい、
そこから、
その言葉が耳にずっと残っていました。
落ち込んでしまい、
お産への集中を途切れさせる原因に・・
お産には、夫の母が付き添ってくれていました。
義母はお産の1カ月前から
一緒に住んでくれました。
自分の母親とうまくいってないわたしは
「頼れるのは夫と義母だけ」との思いが
強く、義母と早く信頼関係が築けるように
と、頭では気を遣っていたみたい。
何時間か待っても産まれなくて、
そこで先生が
「お母さん、まだ産まれないみたいだから一旦帰りましょうか」
っておっしゃったんですね。
その場に義母がいない方がお産が進む、と
いう判断だったのかな、と思います。
案の定、義母が帰ってから、
すぐ生まれました!
お産に集中する環境って本当に大事なんだな、
って思います。
出張先から駆け付けた夫と。
産後の気持ち
青ヶ島で聞き取りをしていると、
お産を特別なものにするな、
って言われるんですが(笑)
感動、感動でワンワン泣きました。
お産のリアル第2子 笑うお産
この時も、めっちゃ気持ちよかったです!!
陣痛が来てから陣痛タクシーで
助産院の近くまで行ったのですが、
なんと車両進入禁止の道にぶつかってしまい、
残り200mほどの所でタクシーを降りて、
陣痛の合間、休み休み歩いて助産院へ。
そのお陰か(笑)体が温まって、
お産自体はすっごい気持ちよかったです!!
お産というと痛いというけれど
どちらかといえば、熱い感じ。
会陰がともかく熱いんですよね。
硬さもとれてリラックスして、
楽しかった・笑うお産でした。
最初から産む覚悟が備わっているから、
とても早かったです。
毎回、生まれるまで性別を聞いていないのですが、
生まれてから数分経ってから、
「性別、あれどっちだったっけ?」
てなるくらいリラックス(笑)
陣痛の最中、
自分の調査研究に役立つかもという想いもあって、
IC レコーダーだけつけておきました。
その音を聞くと恍惚とした感じ、
セクシーな感じの声が聞こえるんですよね。
だけど、外部の音がすると、
例えば
エアコンがピッとなるだけでも、
その瞬間、集中が
ぶった切れちゃう感じ、
遮断されちゃう感じがするんですよね。
産むっていう生き物の行為が切れちゃう。
集中することが大事、と
青ヶ島での調査研究で話を聞いていますが、
こういうことか、と納得しました。
仲良し姉妹
産後の気持ち
産後の気持ちは
1人目は感動だったけど、
2人目はやったー、でした。
あの頃の気持ちや、
覚悟したことが、
自分の中の判断基準になっています。
1人目は助走で、
2人目で心を意識したお産になりました。
おんぶと抱っこ
当時の自分にかける言葉
焦らなくていいよ、
目の前のことに向き合っていったら、
望む形ではないにせよ、
良いようになっていくよ。
それでいいって思えるから、
集中してね。
お産は女性にとって、
大きな変革期。
生き方にすごく大きなプラスになるし、
マイナスにもなる。
わたしらしく選択できた!
たとえ、間違えた、ってなっても、
今がいいなら、それもオールOK!!
仲良し姉妹、餅つきの手伝い
生と死は表裏一体
今はそんなことはないんですが、
昔は自己肯定感がすごく低くて。
そのことも関係して
死にまつわる習俗にもすごく興味があります。
お産は見える世界。
死は見えない世界。
でも、どちらの習俗にも似たものがあります。
例えば、お七夜と、初七日。
31日から33日に行くお宮参りと、三十三回忌。
それはそれぞれが魂をその世界に定着させるという
役割を持っているんですよね。
死ってそれで終わりなのではなくて、
死んでから新しい世界を生きることになる。
現在の生き方は、
生活から生と死を切り分けている。
お産や死に対する怖さは
そこから生まれてくるのではないかと思っています。
死と向き合うこと、
死について風通しをよくしておくことも、
大事なことだと思っています。
なので我が家では
お義母さんがどういう風に、
どういう方向で
死を迎えたいかを、
よく話しています。
わたし自身がお義母さんへ
敬意をもって接しているので、
子ども達にも自然とその姿勢は
伝わっているように感じています。
おまるに座りながら生まれたばかりの妹に本を読んであげる長女。
編集者より一言
亜紀さんはお産について調査研究をされていて、
そのご縁で今回お話を聴かせていただくことになりました!
研究の話と相まって、お産に集中することの大切さ、
とくに、親との縁をいったん切るという覚悟。
すごいことですよね。
実は、
母親にどう思われるか、
母親が自分の選択をどう言うのか、
に囚われている方って多い。
というか、ほとんどの方が
無意識に親の価値観と同じなんですよね。
なので、
本当に自立して親と子の関係を見直すために
いったん連絡を絶つというのは、
見方によっては非情にもみえますが、
めちゃくちゃ親孝行なんじゃないかな、って思います。
そのことを通して、親子ともに成長し、
子どもは新しい家庭と価値観を創れるわけですから。
そして、そんな時期を経て
現在亜紀さんは、実母との関係も回復して、
言いたいこともはっきりと伝えられるようになったそうです。
亜紀さん、貴重なお話を聴かせていただき、
ありがとうございました!!
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